読了時間: 9分冷土にて SS・短編冷土にて 短編 / 無色の陰影本編第七話中の時期。どこかの年の尾研の誕生日に関する話。 今年の十一月六日は、可燃ごみの日。 早朝、日が昇る前の薄暗い道路に二点の白いヘッドライトが現れる。 星のない夜空を切り抜いたかのような漆黒の車体が、寝静まった住宅街の隙間をゆったりと滑るように進んで行き、ごみ集積所の...
読了時間: 24分冷土にて SS・短編冷土にて 短編 / 解ける光、融けない悲哀星影(親方)視点によるアンリの生い立ちと、アンリのニ十歳の誕生日の話。 誕生日のエピソードは本編第一話の時期から約四年前。 短編「幸いは無味に似て」から話が繋がっている部分があります。 十三年前の一月某日、町から飾水とハルカが姿を消した。...
読了時間: 12分小説冷土にて 短編 / 幸いは無味に似て本編第一話の時期から約四年前。 雪路が家具店で迎える初めての誕生日の話。 瑞々しい新緑が野山を覆う五月。 雪路がダイバーの仕事を辞め、故郷の町に戻ってから約一ヶ月が経過していた。 桔梗家具店に受け入れられた雪路は、店の物置きだった一室に寝泊まりを許され、店の一員として働いて...
読了時間: 8分小説冷土にて SS / 漂着本編エピローグ後想定。 雪路と遼遠が一緒に寝て起きてるだけの話。 静かに雪が降り続いている朝だった。 冬場の空気は、ただ冷えているだけではない独特の気配があった。雪がどれだけ激しく降ったところで、雨や霰のように音は聞こえてこない。雪は降り積もる程に周囲の音を塞いでいき、無音...
読了時間: 7分小説冷土にて SS / 夜明けを待つ本編第八話後半頃。 穂波が遼遠に声のマーキングについて教える話。 「遼遠、キミにマーキング特有の響きを教えてあげようか」 雪路が青い霧の中にあるという集落へ向かうことが決まった夜。 桔梗家具店の面々に穂波と尾研を加えた何とも言い難い夕食を終えた後、車へ戻ろうとしていた穂波が...